ウォール街の闇 2008 11 16
書名 ウォール街の闇 富はどこへ移転するのか
著者 堀川 直人 PHP
タイトルからすると、中身は、だいたい見当がつくと思いますので、
本書の特色といえる第三章を取り上げたいと思います。
もちろん、他の章も、十分に読む価値がありますが、
あまりに生々しく具体的なことが書いてありますので、
ここでは引用を避けたいと思います。
さて、第三章ですが、
この章は、要するに、
お人好しの邦銀がウォール街に進出しては、
お金を巻き上げられるという「金融史」について書いてあります。
無論、お人好しの邦銀は、ウォール街だけでなく、
他の国からも都合よく利用されているかもしれません。
もしかすると、世界各地で、「慈善事業」を行っているかもしれません。
慈善事業を行うことは尊いことですが、
自分ではビジネスのつもりでも、結果的に慈善事業になってしまうのは、
決して褒められたことではありません。
たとえば、このような文章があります。
(以下、引用)
1994年に営業が開始された英仏海峡の海底を通るユーロトンネルも、
邦銀が巨額の資金を最終的に「寄付」させられた、
アセット・ファイナンスの一例である。
これについては、こんな話が伝わっている。
ある日の夕方のことである。
霞が関にある大蔵省高官の部屋の電話が鳴った。
受話器を取った高官は、飛び上がるほど驚いた。
相手は何と、イギリスのサッチャー首相だったのである。
衰えたりとはいえ、相手は大英帝国。
それも首相じきじきの電話である。
高官はプライドで胸が高鳴り、
その日から彼は、「鉄の女」の奴隷になった。
彼は、すぐさま邦銀各行の頭取に電話をかけまくり、
翌日から部下に命じて奉加帳を回した。
当時は、いわゆる護送船団方式の時代である。
トンネルは、日本のカネと技術を使い、
8年の歳月をかけて見事に開通した。
しかし、計画どおりの収益は上がらず、
例によってリスケジュールとなった。
担保はトンネルだが、
これは切り売りするわけにはいかない。
要するに、これも実質上、無担保のファイナンスだったのである。
結局、邦銀は約3200億円のうち半額の約1600億円を、
泣く泣く償却したといわれている。
(以上、引用)
これを読んで、「ひどい」と思った人は、
海外に出てはいけません。
日本国内で活動すべきです。
生き馬の目を抜く海外では、
こうしたことは、ごく普通ですし、当たり前でしょう。
あまりにも日本人が無防備なだけです。
また、一国の首相が自国の利益のために働くことは当然です。
外交もビジネスも、国益(利益)を求めて戦うのは、当たり前です。
要するに国益と国益のぶつかり合い(衝突)です。
国益と国益が、激しく、ぶつかり合った後から、
いや、上品な言葉で言えば、各人の哲学や信念をぶつけ合ってから、
譲歩できるものは譲歩する、これが交渉というものでしょう。
最初から譲歩してしまう、あるいは言いなりになってしまうのは、
交渉ではなく、寄付か、あるいは慈善事業でしょう。